高血圧の治療は腎臓を守ってくれる?

高血圧は腎臓の機能を悪くする原因?

腎臓は”腎臓の機能が悪いと言われたら”で御説明したように血液をろ過して尿に老廃物を捨てるろ過機のような臓器です。当然、細かい血管のかたまりのような臓器になります。そのため、動脈硬化を進めてしまうような病気が、腎臓の機能を悪くする原因になります。例えば高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症といった生活習慣病が、このような病気の代表ですね。現在日本で腎不全になってしまう原因は

第1位:糖尿病43%

第2位:腎炎17%

第3位:高血圧14%

(高血圧などが原因で腎不全になることを腎硬化症といいます)

で、3位までの疾患で75%近く、糖尿病と高血圧症だけで6割近くにもなってしまう現状です。以上のように高血圧が腎臓を悪くする大きな原因の一つであることは確実と言えると思います。

さらに悪いことに腎臓の機能が悪くなると、血圧が高くなりやすくなります。これにはいくつか原因があるのですが、その代表的なものを2つ挙げてみます。

まず一つとして、腎臓の機能が悪くなると塩分を尿に捨てる力が弱くなり、体に溜まりやすくなることで血圧が高くなりやすくなります。これが進むとむくみの原因となったり、ひどくなると心不全を起こしたりします。

もう一つは、腎臓の機能が悪くなると、腎臓自体が血圧を上げるホルモン(レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系といいます)を活発にします。腎臓が弱ってくると、腎臓自体が自分にダメージを与えるはずの高血圧を起こしてしまうのです。

ただこれは腎臓を責めないで欲しいのですが、十分に血液をきれいにできなくなった腎臓は、血圧を上げることで腎臓に血液がたくさん送られてくるようになり、たくさんろ過をして尿に老廃物を捨てようとするのです。しかしこれが最終的には腎臓にダメージを与えて腎臓の機能が悪くなることにつながってしまいます。まるで働きすぎで過労死してしまうようですね。内臓は基本的に働きものなのです。

どのくらいの血圧で腎臓の機能が悪くなるのか?

腎臓の機能と血圧には密接な関係があることがお分かりいただけたかと思いますが、それでは血圧がどのくらいだと腎臓の機能がどのくらい悪くなるのか、ということが当然気になると思います。海外の報告にはなるのですが、いくつもの研究の結果を合わせて考えたメタ解析という研究で、上の図のような関係が示されています。

平均血圧=下の血圧+(上の血圧ー下の血圧)÷3

という関係ですので、全く治療せずに平均血圧が120mmHg程度(通常の血圧でいうと例えば160/100mmHgとなります)のまま様子をみていると、1年間に12%近く腎臓の機能が落ちるのに対して、140/90mmHg程度まで下げると5%程度、130/80mmHg程度まで下げると2%以下まで腎臓の機能が低下する速度を下げられる、という報告です。海外から、しかも2000年の発表ですので、現在の日本にそのまま当てはめられるわけではありませんが、高血圧の治療が腎臓の機能を守ってくれる、ということは確かだと思います。

腎臓の機能が悪い時は血圧の下げすぎにも注意

一方で下げすぎることも注意する必要があることが、最近やはり海外からの報告ですが指摘されています。どのくらいの血圧を目標とするか、という問題に対してとても大きな影響を与えたSPRINT試験(Systoric Blood Pressure Intervention Trial、N Engl J Med. 2015; 373: 2103-16. )という研究があります。その研究は

・糖尿病を除く高血圧患者さん(米国、プエルトリコの方9361例)

・標準降圧群:収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以下を目指す

・厳格降圧群:収縮期血圧(上の血圧)が120mmHg以下を目指す

・厳格降圧群の方が心血管イベントでは25%、全死亡では27%リスクが低下した

という、従来の血圧140mmHg以下よりももっと厳しい血圧の治療がよりよい結果を患者さんにもたらす、という研究で、これをもとにガイドラインが改訂されるような大きなインパクトを持った研究でした。しかしこのときに、厳格降圧群で腎機能低下が多い、という点が指摘されていました。そこに注目した研究が2017年のアメリカ腎臓学会で発表され、平均血圧の低下が

・20mmHg未満    :4年間で腎機能が低下するリスクは2.5%程度

・20mmHg~40mmHg:4年間で腎機能が低下するリスクは5%程度

・40mmHg以上    :4年間で腎機能が低下するリスクは9.5%程度

と血圧の低下が大きい群では逆に腎機能が低下するリスクが上がる、ということが報告されました。腎臓は弱ったときに血圧を上げて頑張って尿を出そうとしていますので、下げすぎることもよくない可能性があるということかもしれません。人間、バランスが大切なんだと思います。


PAGE TOP