透析が必要ですと言われたら

透析が必要ですと言われたら

腎臓の機能が低下して尿に捨てるはずの老廃物が血液に溜まってしまうと、様々な症状が出現します。そのような症状を治療するために、現在では血液透析、腹膜透析、腎移植の治療法があります。”腎臓の機能が悪いと言われたら”で御説明した腎臓の機能が、10%を切ってくると、透析が必要となる可能性が出てきます。それぞれの治療も”明日はじめましょう”といって簡単にはじめられるものではありませんので、腎臓の機能が落ちてきたところで、色々な準備をしておく必要があります。

少しずつ何年もかけて腎臓の機能が悪くなってきた場合は、慢性腎不全といって腎臓の機能を改善させることは難しいと考えられます。一方で数日、数週間といった短い期間で急に腎臓が悪くなった場合は、急性腎不全といって腎臓がショックのような状態になっていることがありますので、腎臓の機能が回復する可能性がある一方で、さらに急激に悪くなる可能性もありますので、一刻も早い対応が必要となります。

透析が必要ですと言われた場合には、その状況にも寄りますが、まずは御自身の腎臓の機能でできるだけ生活ができること、それが難しい場合には適切な時期に治療を準備することが大切です。

血液透析

血管に針を2本刺して、一方から血液を取り出し機械でろ過を行い、きれいになった血液をもう一方からお返しする治療です。確実に血液をきれいにできる一方で、血液を体外に循環させる治療ですので、一般的には医療機関で行う必要があります。また腎臓を治してくれるわけではなく、あくまで腎臓の代わりに血液をきれいにしてくれる治療ですので、1回行えばずっときれいになるわけではなく、週に2~3回継続して行う必要があります。

準備としては、血液を出し入れする血管を準備する必要があります。血液透析では1分間に100~250ml以上の血液を出し入れする必要があります。一方で通常採血をするような血管(静脈と呼ばれます)は1分間に10ml程度の血液しかとり出せません。そのため通常は”シャント”と呼ばれる血液の出入り口となる血管を、2週間以上前に作る必要があります。当院ではシャントを作る手術、血液透析のどちらの治療も行っており、入院をせずに外来で血液透析を導入することも行っております。

腹膜透析

お腹の中に管を入れて、そこからきれいなお水(腹膜透析液といいます)を入れることで、血液の中の老廃物がきれいなお水に溶け出します。そのお水を1日に数回入れ替えることで、老廃物を体の外に出す治療が腹膜透析となります。メリットとしては、自分でお水を入れ替える治療ですので、医療機関への通院が少なくて済む(通常月1~2回)ことがあります。また血液透析のように週3回、1~2日おきに3~4時間で急にきれいにするのではなく、ゆっくり少しずつではありますが毎日きれいにすることで、心臓にかかる負担などが少ないことが挙げられます。一方で、御自身でしっかり管理が必要なこと、お腹の中のお水を入れ替えるときに細菌がはいってしまう合併症(腹膜炎といいます)の可能性があることや、やはりお腹に負担がかかりますので数年以上続けることでお腹の動きが悪くなってしまう合併症(被のう性硬化性腹膜炎といいます)の可能性があることに注意が必要です。

準備としては、お腹の中に管を入れる手術をする必要があります。これは入院が必要な手術になりますので、当院では行えません。お近くで対応可能な病院を御紹介させていただいております。腹膜透析自体の治療(月1~2回通院いただいて採血検査などを行い、治療の内容を検討します)は行っておりますので、何かございましたらお気軽に御相談ください。

腎移植

腎臓は2つずつあり、元気な腎臓が1つあれば腎臓の機能は100%近くに保たれます。これは通常、腎臓には余力があるため、片一方の腎臓が弱ってしまっても、もう1個の腎臓が頑張って働くことで、しっかりと血液をきれいにできるためです。そのため、腎臓の機能が落ちてきてしまった場合には、一般的にはどちらか1個の腎臓が弱ってしまったわけではなく、両方の腎臓が弱ってしまっていると考えられます。腎移植とは、腎臓を一つもらうことで、血液をきれいにする治療になります。元気な腎臓が1つあることで、継続的に血液をきれいに保つことができます。

腎移植には、御家族から腎臓をもらう生体腎移植と、脳死、心臓死した方からもらう献腎移植があります。また生体腎移植の場合には、上記のような透析療法を行っている状態で移植を行う場合と、透析療法を行わず、あるいは数回行うだけで、移植を行う先行的腎移植(preemptive transplantation:PET)があります。PETを行う場合には、早い段階から準備をしてタイミングをみる必要があります。献腎移植は、透析を行っている方が移植を希望される病院に登録をしておく形になります。移植は総合病院しかできませんので、当院では総合病院へ御紹介させていただき、しっかりと連携とって診療を行っております。2017年には当院で透析を受けていらっしゃったお二人の方が、腎移植をお受けになっておられます。

投稿:鶴田悠木

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